
上野歩の今日もホフク前進
『ご近所トラブルシューター』刊行エッセイーー探偵の物語
僕が少年だった昭和は、シネコンなどというものはなかった。市川崑監督の『犬神家の一族』(1976年角川春樹事務所 同監督がリメイクしたほうでなく、1回目の作品)を観たのは、浅草東宝だった。浅草東宝は、長いエスカレーターに乗って客席上部から入場する映画館だった。前方に立ちはだかるスクリーンはダムのごとく巨大で、湾曲していた。中学生だった僕は、父と一緒に『犬神家の一族』を観た。大量宣伝がテレビCMに投入...