大人の宿で暇を味わう(2泊目)

夜明けとともに大浴場の露天風呂へ。
部屋付きのお風呂もいいけど、僕はやはり広い露天風呂がいい。

部屋に戻ると、売店で求めた有機農法ビール、そして持参したサントリー角を飲(や)る。
宿のおいしい地下水で水割りをこしらえます。朝だから薄目にと言い訳しつつ。
そして宿のライブラリーから借りてきた『東宝特撮全怪獣図鑑』のページをめくります。
宿のある須賀川市は、特撮の神様・円谷英二氏の出身地。
そして、1964年の東京オリンピックのマラソン銅メダリスト・円谷幸吉選手の出身地でもあります。
昨夜、食事のコンシェルジュを担当してくれた若い女性に訊いたところ、須賀川は円谷姓が多いのだとか。

朝食も有機栽培の野菜と釜炊きご飯を中心に。
テーブルの真ん中の空いているところにはーー

ーー焼きたてのタラと卵焼きが登場。
この卵焼きですが、白く見えるのは、平飼いした鶏の餌にお米を与えているためとか。

次の日の朝食は温泉玉子だったのですが、黄身はこんなふうに白いのです。

さて、暇を味わいに来ているのですから、あとは薪ストーブのあるラウンジやカフェでぼんやり過ごすか、部屋で読書するくらいしかすることはありません。

もちろん温泉には何度も浸かります。
大浴場はちろん、個室風呂にも。

刻々と変わる東北の澄んだ空を眺めつつ、ゆったりと露天風呂に身を委ねる。
以前は来し方行く末を思ったものですが、近頃は来し方を思うことのほうが多くなりました。
熱すぎずぬる過ぎない湯の中にいて、きりっとした冷たい風が頬の横を通り過ぎていきます。
日々それほど忙しくしているわけではないのですが、ここにきて急かされるような気持ちが消えていきます。

夕食前の1時間。売店で買ってきた有機農法ビールを飲みます。
なんのかんの言いつつ、この瞬間のために今日も生きてきたような。冷蔵庫でコップもしっかり冷やしてありますよ。
さっきロビーで夕食担当のコンシェルジュの女性と行き違い、「今夜もいろいろお話ししましょうね」と言われたのを思い出し、口もとが緩む。いや、ここにいるすべての時間が大事なのだ。
ゆっくりした時間が、しかしあっという間に過ぎていく。まるで人生の後半のように。

今宵の食事もまたお酒がすすむ肴ばかり。
すっかり僕ら夫婦と打ち解けたコンシェルジュの女性が、「実はあたしには大きな野望があって」と、将来は故郷でオーベルジュを開きたいのだと夢を語ってくれました。

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