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/ 上野 歩
monthly essay / ueno ayumu

ぴー吉 第37回『日帰りバスツアー(2)』

挿絵  かれこれ前世紀のこととなってしまったのだけれど、先月、また日帰りバスツアーに参加した。
 今回は、秩父夜祭の見物に出かける。
 西武池袋線の石神井公園駅近くに住んで8年ほどになるのだが、沿線の秩父で毎年12月3日におこなわれる、この例大祭のことは、あまりよく知らなかった。それを見てみようというもの。
 昼すぎには、秩父に到着。
 いや、着いてみて、驚いた。
 ありとあらゆる旅行会社がこの日帰りツアーを組んでいて、仮設駐車場にはさまざまな色あいの観光バスがクジラの群れのようにひしめいている。そして、そこからはきだされてくる人、人、人、人……。
 なにしろ、僕の参加した地元のちいさな旅行会社のツアーにしてからが、バス3台で乗りこんできているのだ。

 さっそく、にぎわう町へとくりだす。
 まずは、祭の中心となる秩父神社へ――が、ここも境内が人であふれかえっていて、満足に参拝もできないしまつ。

 子どもらの持ったヘリウムガスでふくらんだ犬やイルカの風船のふらふらと浮かぶ、イカ焼の甘じょっぱいにおいのただよう、もうもうとしたタバコの煙りがたちのぼる広場で、地酒のどぶろくをビニールコップでちびちび飲りながら、おねりの到来を待つ。
 そんなふうにして見上げる白茶けた冬の午後の空は、どこかなつかしい、さびしい色をしている。この祭が終わったら、あとはなにをたのしみに生きていったらいいんだろう、と思って、とほうにくれてしまうみたいに。

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