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/ 上野 歩
monthly essay / ueno ayumu

ぴー吉 第200回 名台詞の研究(3)

『ファミリー・ツリー』はハワイを舞台にしている。そうして、またハワイであることが大きな意味を持っている。
 ジョージ・クルーニーの役どころは弁護士というあたりはいつものモテ男の定石通りだが、それ以外はだいぶ違っている。この映画のクルーニーはただの無力なオジサンだ。
 ボート事故で入院中の妻は命旦夕に迫っている。
 仕事一筋だったクルーニーは、2人の娘の面倒を見なければならなくなる。が、彼女らとの間には、埋めようのない溝が深まっている。長女が連れてきた彼氏は、最低限の礼儀さえわきまえないようなトンチンカン野郎だ。
 クルーニーは先祖から受け継いだ広大な土地を管理しているが、それを売却しなければならない期限が迫っていた。
 そんな時、妻が浮気していたことを知る。その相手というのが、土地を買おうとする不動産会社の経営者だった。
 行き場を失ったクルーニーは、長女の彼氏と深夜に話をする。と、そのボーイフレンドが言う。
「オレはイケてるよ」
「イケてるには程遠いと思うがね」
 と呆れるクルーニーに向かって、彼は平然と言い放つ。
「清潔だし、ギターうまいし、料理もいつも作ってる」
 そう、充分にイケてる。そんな気がして来る。そして人生とは、清潔で、ギターがうまくて、料理が作れれば充分なんじゃないか、そう納得してしまうのだ。

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