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/ 上野 歩
monthly essay / ueno ayumu

ぴー吉 第181回『北の町に桜を訪ねて(中編)八甲田山』

挿絵

・2日目

 バスは、十和田湖から流れ出る唯一の河川、奥入瀬(おいらせ)渓流に沿って走る。大小の滝が、そちこちに点在する景勝地である。東北では春まだ浅い、森と水の風景が続く。

 やがて、八甲田山中へと入ってゆく。
 言わずと知れた映画『八甲田山』の舞台である。
 公開当時中学生だった僕は、この映画を父親と観に行ったほか、学校の映画教室でも観ている。間を開けずに二度見たせいもあったし、雪ばかりのシーンが続き、途中で退屈したのを覚えている。
 亡くなった父は『八甲田山』が好きで、VHSで繰り返し観ていた。男は我慢する映画が好きなのだ。僕も今なら『八甲田山』を面白く観られるかもしれない。
 映画は明治期、八甲田山で実際にあった雪中行軍演習での遭難事件を描いている。重装備と大行軍で敢行した北大路欣也が指揮する青森連隊は、同行した上役の三國連太郎(これが憎たらしいんだ)が横やりを入れ、猛吹雪の山中を迷走し、多数の犠牲者を出す。
 極限状態の中で、軍人らは子ども時代のことや、ねぶた祭りなどを思い出す。

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