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/ 上野 歩
monthly essay / ueno ayumu

ぴー吉 第152回 九州温泉紀行(前編)大宰府天満宮〜由布院

挿絵  朝刊に、ことしの10大ニュースが出る頃、九州に2泊の温泉旅行に出かけた。
 飛行機で福岡まで行き、そこから、1列3席のゆったりシート仕様の観光バスで、あちこち見物しながら由布院に1泊、黒川温泉に1泊しようという寸法である。

・1日め
 11時過ぎに福岡空港に着陸すると、そのゆったり観光バスが待っていて、「小倉牛丸むすび」という弁当が車内で配られる。九州地方の空弁らしい。大きな軍艦巻きに牛肉のすき焼きふうがのったの、小ぶりの海老天を海苔で巻きつけたの、海苔の代わりに牛肉を巻いたの、竹の子ののったのなど、素朴で旨いおむすび弁当だった。今夜からは温泉旅館特有の豪勢な会席料理がつづくだろうから、昼はこういうシンプルなのがよい。
 車内で弁当をつかい、間もなく太宰府天満宮に到着。全国に1万5千あるといわれる天満宮の総本宮だ。
 菅原道真公(天神さま)といえば、学問の神さまである。東京・墨田区にある実家から自転車で20分ほどのところに、天神さまを祀った亀戸天満宮があって、よくお参りに出かけた。
 僕がお願いしたのは学問というより文章の上達で(学問のほうは、いまさら天神さまにすがっても、どうにもならないくらい壊滅的な状況にあった)、境内にあった筆塚に使用済みのボールペンなんかを納めたりした。やがて、筆記具の代わりにワープロをつかうようになったのだけれど、これが壊れた時には筆塚に持っていくべきかどうか真剣に悩んだものだ。だって、不法投棄になるでしょ。

 さて、この日の大宰府はあいにくの雨だった。鳥居をくぐって、過去、現在、未来を表す、三つの太鼓橋を渡る。過去は振り返らず、未来ではつまずかないように注意しつつ渡るのだそうな。
 本殿の屋根は檜皮葺(ひわだぶ)きである。境内は受験シーズン目前で閑散としているが、正月はすごい人出だろう。
 菅原道真といえば、大手町の首塚でおなじみの平将門とならぶ御霊神である。政治的に失脚し、不遇をかこち、この地で病没した道真の亡骸(なきがら)は牛車で葬送された。死後に都で起こった天変地異や疫病を祟りとしたのは、生前に道真を排除した側が、それを後ろ暗く思うからだろう。
 一方で、丑年の丑の時(午前2時ごろ)の生まれという道真は、丑の刻参りを連想させる恨み体質の人物であったのか。
 バスにもどると、博多名産の明太子の試食があった。しょっぱくなくておいしい。東京のスーパーで売っている安い明太子はしょっぱいばかりだ。

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