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/ 上野 歩
monthly essay / ueno ayumu

ぴー吉 第143回 山形温泉紀行(後編)出羽神社〜最上川雪見こたつ舟〜銀山温泉

挿絵 ・2日め
 6時まえに眼覚め、こんどは雪の舞い散るなかふたたび庭園露天風呂に。
 部屋にもどってシングルモルトウイスキーの薄い水割りの朝酒を啜っていたら、温海川の向こう岸で、除雪車が緑色のライトを点滅させながら行ったり来たりを繰り返しはじめた。
 夜明けまえのひと気のない温泉町で、寡黙に除雪作業を行う姿を見ていたら、ディズニーのCGアニメーション映画『WALL・E/ウォーリー』を思い出してしまった。あれは、本編を観るまえに〔700年間ひとりぼっち〕というコピーの中吊り広告だけで、想像をめぐらせ地下鉄の車内でむせび泣いてしまったものだ。

 朝食を終えると萬国屋さんを後にし、庄内平野の雪景色を眺めつつ移動。海に近い温海とは打ってかわり、内陸は“THE雪国”といった様相を呈している。
 羽黒山山頂にある出羽神社(いではじんじゃ)を参詣する。
 この時期、出羽三山の月山神社、湯殿山神社は雪深くて入山できないのである。
 とはいえ、この出羽神社の積雪も相当なものだ。山伏(若い方で、雪のなかビニール傘をさしておられた)の先達で三神合祭殿に昇殿する。出羽神社には、月山神社と湯殿山神社も合祭されているのだ。つまり、ここにお参りすることで、出羽三山の三神すべての参拝をカバーすることができるわけで、おトク感があるというか、ひじょうにありがたいのである。
 それにしても雪山の奥地に、このように深閑とした朱塗りの宗教的な大空間があるとは。
 ご祈祷を受け、伏して玉串で清められ、お札を授かる。
 なんとなく身が軽くなったように感じた。

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