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/ 上野 歩
monthly essay / ueno ayumu

ぴー吉 第137回 伊丹十三記念館

挿絵  最寄りの停留所でバスを降りたときには、午前10時の開館まで20分ほどあった。そこで、クルマの往来の激しい車道を渡って反対側にあるバス停に向かう。帰京する飛行機の時刻もきまっているし、このあとにもほかに訪ねてみたい場所がある都合上、引き返すバスの時間を調べておこうと思ったのだ。
 運行時刻表を写メして、近くのモスバーガーに入った。
 カウンターでテリヤキチキンバーガーとMサイズのコーラを頼み、マガジンラックにあった報知新聞を手にする。ラミレスの決勝2ランで、ジャイアンツがマジックの数字を減らした一面記事に満足しつつ窓外を見やると、赤トンボがふうわりふうわり夏の終わりの風にはこばれていった。

 時間だ。
 僕はモスバーガーを出た。
 かすかに心が昂揚していた。
 ふたたび通りを向こう側に渡り、かつて氏が一六(いちろく)タルトのテレビCMに出演した縁のある菓子メーカー、一六本舗の洋館のような店舗をはすに眺めながら天山(あまやま)橋という橋を渡ると、想像していたよりも小ぶりな黒い建屋を中心とした伊丹十三記念館のまえに立った。
 仕事で愛媛県松山市を訪ねる機会を得て、ここにはぜひとも立ち寄りたいと思っていたのだ。

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