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/ 上野 歩
monthly essay / ueno ayumu

ぴー吉 第127回 佐渡(後編)

挿絵 ・2日め(つづき)
 トキの森公園でトキを観察したあとは、クルマで40分ほど移動し、小木(おぎ)でたらい舟に乗る。まさに佐渡観光の王道とでもいうべきコースである。

 小木漁港に到着すると、観光客を乗せたたらい舟が何艘もぷかぷか浮いていた。順番を待って僕も乗り込む。
 若い女船頭さんにきいたところでは、サザエやアワビをとるのに小まわりがきくところから用いられるようになったというのが、このたらい舟の発祥とか。
 僕もすすめられて漕いでみたのだが、なかなかうまく進まない。その場をくるくる回転していると、「スミイカの子がいます」と女船頭さんが言う。
「え、どこどこ?」
 スミイカの子といえば、新イカと称して秋口に付け台にのぼる鮨ダネの季節の風物詩である。
 船頭さんは僕に代わってふたたび櫓(ろ)を持つと、見事なテクニックで他のたらい舟のあいだを漕ぎ抜けていった。
「あそこ」
 彼女の指さす方向を見やると、たしかに海面からすぐのところにちいさなイカが数匹ただよっている。しかし、そのイカの子は、スミイカの特徴であるところの楕円形の胴ではなかった。スルメイカやアオリイカのように先がとがっている。
 おかしいな、と思っていると、
「ほら、こんどはサヨリの子が見えますよ」
 と言われて、そのままになってしまった。

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