眠る瓶詰め

火鍋が食べたくなったんだ。

某有名輸入食品チェーン店に行ったら、いつも売り切れの火鍋の素が売っていた。
おおラッキーと買って帰り作ってみると、どうも坦々麺のような味だった。
それはそれで美味しくはあるのだけど、どうもこれじゃない気がした。
火鍋といって思い浮かべる、あの赤くて辛くて漢方っぽい味のするやつ。
あれを食べてみたいと思った。

それで上野アメ横にいってみたの。
あそこは食材店もガチ中華だから、本格的なの鍋の素があるはずと踏んだのさ。

行ってみるとあるある。っていうか何種類もある。
どれがいいのか迷っていると、中国人らしきカップルが、とある火鍋の素を即決で買って行った。
本場の人が心に決めた商品なら間違いない。真似して買ってみた。

異常な辛さだった。

赤唐辛子と花椒がどっさり。本気の辛党でないとムリな味だった。
具も盛り沢山に、煮え煮えの極辛鍋を前にしばらく呆然とする。
なぜ本場の火鍋など食べようと思ったのか。
この大量煮え煮え極辛鍋をどうすればいいのか。

とりあえず汁を3分の2程度取り出し、大量の豆乳を加えてみる。
これでひとまずなんとか食べられた。

次に取り出した汁だが、まず濾して上澄みの唐辛子と花椒を分離し、小瓶に分ける。
さらに汁に浮いた油を掬い取り、これも同じ小瓶に加える。
見た目ラー油の小瓶みたいになった。
残りの汁はタッパーに入れる。

タッパー汁は、毎日麻婆にしたり坦々麺にしたりアレンジした。
少しづつ使い、実は昨日ようやく食べ切ることができたんだ。
なんとか無駄にせずに済んでよかったとほっとした。

そこで頭をかすめるのは、件の小瓶だ。
こいつはティースプーン2杯までが毎食の自分的致死量上限なので減りゃしない。

あの瓶詰が今もゴジラ+1のラストシーンよろしく冷蔵庫の奥で眠っている。
そう思うと背中がぞわそわしてくるんだ。

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