神はいるのです。身近な場所に。
神はいるのです。そう、閉店間際のスーパーマーケットに。
店員さんの姿を借り、手には「半額シール」を持ち現れるのです。
私はそのシールを「いかづち」と呼んでいます。
神がいかづちを持って降臨なさるとき、私は涙し家計は救われるのです。
20%のいかづちを操る神を「エンジェル」とお呼びしています。
エンジェルは若い方が多いようにお見受けします。
「ポセイドン」とお呼びしている魚売り場専任の神もおられます。
大海原に落とされるいかづちにも注意しなければなりません。
しかし、私が特に崇拝している神はどこの売り場にも現れるボウズ頭の全能の神。
「店長神(てんちょうしん)ゼウス」とお呼びしている神です。
真打ゼウスの動きには、他の神々にあまり見られない特徴があることに気づきます。
パン売り場でカレーパンあたりに、そのいかづちをお振るいになられたかと思えば、
いつのまにか遠くの惣菜売り場でアジフライなどにそのいかづちを振り下ろす姿があります。
と、思えば、またいつのまにかパン売り場に現れサンドイッチなどしげしげと確認されておられます。
あっちこっちにお出ましになるのです。
我々民衆の中にも、神のゆくえを絶えず横目で確認しながら、尊いいかづち済み商品を、ものすごい勢いで己のカートに収めてゆく猛者がおります。所謂プロの「カゴ師」です。
ゼウスが神出鬼没なのは、プロカゴ師がひとつの売り場に集中することを避けるためでしょう。
ともすれば、商品を独り占めしてしまうプロカゴ師をケムに巻き、その糧を得るチャンスをより多くの民に広げておられる。なんと慈悲深く、すばらしい誘導でしょうか。
時には、ゼウスが究極のいかづち「半額」をお振るいになりはじめた脇から、「これにもお願いします」と商品をさしだす「プロ中のプロカゴ師」が現れることもあります。
そんな強心臓のプロカゴ師にも笑顔でご対応なさっている神のお姿には、涙を禁じ得ません。
ゼウスよ、嗚呼ゼウスよ。
たとえ会計でそのいかづちが「半額」に紛れ込んだ「30%」にだったことに気づき愕然としても、お慕い申し上げております。