1995-07-01

上野歩の著書

チャコールグレイ

それぞれが美しい、鮮やかな色彩の絵の具であっても、それらをすべて合わせると灰色になる。晴れた日曜日の午後、彼女は僕のところにやってきていて、窓をあけて導き入れたチャコールグレイの猫をやさしく膝の上で抱きながらそんなことを言った。前夜に3月の雪が降った北の丸公園で、僕は彼女に最後にもういちどだけ会った。書き下ろし青春小説。