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_バリ島・ロンボク島

第1話 第2話
第3話 2日目 前編 


 分岐点。
 ある選択をしたために、突然ピンチに陥る運命の交差点。それがその朝の電話だった。

 バリ島最初の朝、昨夜コーマンさんが手配してくれた人から約束通り電話があった。
 この人は今日行くはずのロンボク島近くに浮かぶ小島、ギリメノまでの交通と宿泊の手続きを面倒みてくれるという人なのだ、当然有料で。
 電話の向こうのたどたどしい日本語をあやつる男は、がんばって色々説明してくれているんだけど、やっぱり思っていた金額の倍くらいを提示してきた。
 そうでなくとも、もともと飛行機やらホテルやらは自分でもすぐ手配できるし、というか現地で自分で何もかもやってしまったほうが、確実かつ安いらしいと調べはついていたので、せっかくだけどと、いとも簡単にことわってしまった。
だいたい誰だかわからんような人にいきなりまかせるのもアレだしな。

-- と、そのときは思っていた。 --

 ホテル、アサナサンティウィリーは朝もやっぱり極楽だった。
 ドアの前には専用のソファーとテーブルがあって、小さいながら心地よい庭を見ながら朝食をとる事ができる。
 愛想のいい女性スタッフがはこんでくるメニューは、パン、コーヒー、ジュース、果物、卵といったありきたりのものだけれど、やっぱりその雰囲気のせいで豊かな気分になってくる。
 フと、ホテルで飼っているひとなつっこい犬が2ヒキ足下までやってきて、
「なんかくわしてくれよう」
とすりついてくる。これがまたなんともかわいい。
 お給仕の姉さんに、日本円で50円くらいの チップをわたす。ものすごい嬉しそうだ。
そんなふうだから、時間までゆっくりしていきたくなったけれど、今日は随分遠くまでいかなきゃならないので、サッサと出発しなければならない。
 荷物をまとめ、チェックアウトの手続きをすませると、フロントのねーさんはお約束で、今日はどこに行くの? というような事を聞いてきた。
 ギリメノまでというと、ギョっとした顔になって、そりゃあ遠いねえ、すごいきれいな所だけどねえ、と困ったような笑顔になった。

*   *   *

 まずは隣の島、ロンボク島までの飛行機チケットをゲットしなければならない。
タクシーを捕まえ、ング・ライ空港のドメスティック側につけてもらう。
 国内線の飛行機は20人乗りくらいのかわいいプロペラ機だ。そんな小型の飛行機は、石橋をたたいてわたらない私としてはもちろんはじめての経験となる。
 飛行機は同じロンボク島行きでも、2、3の飛行機会社から便がでていて、出発時刻も微妙にずれている。我々はこれまたネットで調べていた時、よく目にした「メルパティ航空」のチケット売り場に行ってみる事にした。
 すると白人の家族らしい一向が受け付けの兄さんと「オーマイガー」なんて言い合っている。
 しばらくオーバーアクションをまじえつつやりとりしていたが、なにか落胆したような顔をして、その家族は去っていった。
 続いて受け付け兄さんになにごとかと聞いてみると、チケットは夕方の便までない、という事だった。白人家族の顔をみてあらかた予想はしていたが。長い滞在ではないので、この半日のスケジュールの狂いが非常にもったいない。
 いそいで別の飛行機会社をあたってみると、こちらも夕方18時の便まで売り切れだという。
 これはこまった、どうしようか。明日にのばすという案もあったが、なんとなく負けたような気がして、ものすごくくやしい。
「本日決行!」
できるだけ当初のスケジュールに近いカタチでいこう! 
 腹をくくりフライトの予約をした。18時なら、まだ明るいだろう。18時30分にはロンボク島につくから...ま、大丈夫。かな? 

 とか心配しているヒマはない。次はホテルの予約をしなくては。
 すぐちかくにホテル予約の受け付けがあって、にこやかなおばちゃんが鎮座している。このへん実に便利。(ちなみに私は英語はからきしなので、チケットもホテルも同行のマイガールが行っている。私は荷物番だ。我ながら極めて重要な役割だ。)
 最終目的地ギリメノ島で泊まりたいホテルも決めていた。名前は「ガゼボコテージ」。クーラーもあってなんとなく良さそうに思えたのだ。ガゼボはどうもチェーン展開しているらしく、バリ島のサヌールにある同名のホテルと関係があるらしかった。そのためか、はなれ小島のホテルのわりに、パンフレットも用意してあった。ホテル予約のおばちゃんがすみやかに確認の電話をいれてくれる。
 担当が外出しているらしくすぐには確認できず、受け付けそばのベンチでしばらく待つ。目つきの悪い女清掃人の隣にこしかけているの。荷物番としては腕の見せ所だ。ギロリとにらみかえしていると、受付おばちゃんが手招きした。無事予約がとれたらしい。

 飛行機もホテルも予約できて一安心。とはいえ夕方までポッカリ時間ができてしまった。
 バリ島は全体がもう楽園的状態なので、かえってこういう時どこにいこうか悩んでしまう。
 日本からもっていった唯一のガイドブックをめくっていると、鳥とハ虫類専門のなかなか面白そうな動物園が目にとまったので行ってみる事にした。
 空港からは結構な距離なのでサッサとタクシーをつかまえなければならない。
 タクシーは空港で目的地までのチケットを買う事ができる、エアポートタクシーというのがあるが若干高くつくので、民間のタクシー会社で青い車体の「バリタクシー」という比較的評判のいいタクシーをつかまえる事にする。
 ほどなく客をおろした直後の青タクシーをつかまえられた。
 運ちゃんは、ガイドブックにある金額より高額を要求してきた。その本は古い、今の相場じゃない、といいはるのだ。そんな事情は知らんが、とにかくディスコン(ディスカウントのことをこっちではディスコンというらしい)としつこく甘えていると、しぶしぶ首を縦にふった。だけど、は虫類見物が終わるまで外で待っててやるからまた俺の車に乗れ、となかなか商売上手なのだ。さらに、これから行くところはかなり山の中で、簡単にタクシーもいないだろうと、飛行機の時間がある我々にとって一番イタイところをついてくる。うーむ、ま、いっかと、帰りもお願いする事になった。
 ねぎりたおしたわりに通りすぎてゆく景色について愛想よく説明してくれる運ちゃん。いい人だ。それも気さくにこちらをふりかえりながら、って前見て運転してね。
 メーターに目をやると、時速80Km近く出ている時もある。
 前見てったら! 
 前見ろ! ギャー! 
 キキキキキキーーーーー ガックン! ! 
 道路工事の兄さんに追突寸前で急ブレーキ。
 車体はGがかかり大きく傾く。乗ってる方も大きくつんのめる。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ ソーリー
 運ちゃん 大笑い。
 客をのせた車で人ひきそうになって大笑いしてやがる。

 バリ島2日目。
 しかしこれもまた、この後につづく悲劇のプロローグであった。


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