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ぴー吉 上野 歩 / イ 
第48回『職人芸』・・・P2

挿絵  人形町にくるのは、じつにひさしぶりである。
 このまえきたときは大学時代からの友人ふたりといっしょで、芳味亭という数奇屋づくりの洋食店の座敷でビールを飲み、カニコロッケやビーフシチューを食べながら、僕は彼らに新人賞に応募する小説を書いてることを話した。

<柳屋>という鯛焼き屋の列にならぶ。
 看板には〔高級鯛焼き〕とあるが、1コ120円である。
 高級なのは味のほうで、ぱりっとした薄皮にはいろんなものが混じってなくて、へりの部分に黒コゲができるくらいの強火で一瞬のうちに焼き上げる。このコゲのかりかりのほのかな苦味と、たっぷりのつぶあんの上品な甘さのハーモニーが絶妙なのだ。
 ならんでる客に、いくつ欲しいか、数をきいてから焼きはじめる。というより、焼くそばから売れていくので、そうなるのだ。
 ごうごう起こる火のまえで、店主が見せるむだのないリズミカルな動きは、まさに職人芸である。
 そういえば、<うぶけや>の主親子(だと思う)の顔やものごしも、まさに職人といった気ふうだった。
 人形町は職人のテーマパークなのである。
 見た目も味もなつかしい、小倉アイスのモナカ(これも120円)を買って、焼きたての鯛焼きと交互に店のまえで立ち食いする。熱くて冷たくて歯が痛い。

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