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ぴー吉 上野 歩 / イ 
第202回 『削り屋』あれこれ・・・P2

 取材後、日立駅で常磐線の特急を待ちながら太平洋を眺めていました。すると、ふいに1974年製作の松竹映画『砂の器』を思い出したのです。
 高校生の頃、学校をサボって中野あたりの2本立ての名画座でこの映画を観ました。スクリーンの中で丹波哲郎演じる警視庁の刑事が、捜査の手がかりをつかもうとあちこちに足を運びます。追っているのは殺人事件なのですが、その姿がとても楽しそうに僕の目には映りました。いや、楽しそうというのは、不謹慎で、不適切な言い方かもしれません。刑事たちは必死に捜査を続けていましたから。それでも、出張が空振りに終わっても、同行した所轄署の若い刑事(森田健作)に向かって、「いやあ、ぜいたくな旅をさせてもらったよ」などと軽口をたたいてみせたりするのです。
 その姿を見て、とても充実した高校生活を送っているとはいえない僕は、いつかああいう仕事に就きたいものだと思ったのでした。もちろん、刑事になりたいというのとは違います。漠然と、なにかひとつのことを追って、あちこち足を運ぶことがしてみたいと思ったのです。
 日立の海を見ながら、オレは今それをしてるじゃないかと感じたわけです。

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